お母さんの好きな味
ふわっと空気にでも水にでも溶けて、最初からいなかったみたいに消えたい。
せっかく薬瓶が空っぽになって、止める機会には丁度いい。
最後にやってから二週間か三週間くらい経ってる。
多量摂取を禁止にされてから、コーヒーが3週間禁止になって、「次したら親に連絡するよ」と言われた。
同じくらいのとき夕飯を食べ始めて、一日二食生活になってきた。
試験が迫ってきた。課題も増えた。
焦って追われてくる。
化粧品の補充も兼ねて栄養ドリンクを買いに薬局に行った。
買う気なんてなかったのに、風邪薬と頭痛薬を買った。
もうないから、なってからじゃ買いに行くの辛いから、生理が重いから。
後付けの理由がいっぱい出てくる。
試験が終わった。
結果はまだわからない。
勉強はたくさんしたけど、もし駄目だったらどうしようって考えて止まらなくなって、自分の救いようのない馬鹿さにため息しか出ない。
まだ試験は残ってる。残りあと6つ。
勉強しなきゃ、合格しなきゃ、課題もしなきゃ。あぁバイトもあるんだった。
無理だ、出来そうにない。
買ったばかりの風邪薬の箱を破いて開けた。
蓋を開けてビニールを出して、お母さんを思い出して買ったグレープフルーツ味の栄養ドリンクと一緒に飲み込んだ。
これが昨日。
徹夜して勉強してODして体調は最悪。
目の下のクマは濃くなるばっかで、青白い顔も隠すためも化粧も濃くなる。
誰にも知られなかったから、「次やったら」もバレることなくて、親に連絡もされていない。
これが昨日から今日にかけて。